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大人になった虫捕り少年

温暖化で見知らぬチョウが現れた!

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北上するツマグロヒョウモン 関東でも普通のチョウに

逆さになって花の蜜を吸うツマグロヒョウモン(前橋市内で)

 〈こんな時代が来るとは驚くばかり〉〈あきれるほどの事態〉〈この光景が当たり前になるのだろうか〉――。この連載に登場してもらった虫屋の人たちが、あるチョウの異変を表現した言葉の代表例です。この2〜3年で、あるチョウが急激に北上を続けています。

 チョウの名前は、ツマグロヒョウモン。羽の豹紋(ひょうもん)が特徴のヒョウモンチョウの仲間で、雌の羽先が黒いことがその名の由来です。大きさはアゲハチョウとモンシロチョウの中間くらい。

 日本蝶類学会の会誌「Butterflies」創刊号(1992年)には「鎌倉市内でツマグロヒョウモンを採る」(原田基弘氏)という短報が載っています。15〜16年前までは、ツマグロヒョウモンが関東地方にいることは学会誌に載るほどのまれな出来事だったのです。皆さんの自宅に、チョウが載った図鑑があり、刊行年がこの2〜3年よりも以前であれば、ツマグロヒョウモンの分布について「東海から近畿以西」(原色蝶類検索図鑑・猪又敏男著・北隆館、1990年)とほぼ同様の記述があることでしょう。

 そんなチョウが関東地方で、もっとも普通に見られるチョウになったのです。身近なチョウの代表格であるモンシロチョウやアゲハチョウを凌駕(りょうが)する勢いです。近い将来、子どもたちが最初に目にするチョウは、ツマグロヒョウモンになるかも知れません。
 

温暖化の影響が証明されたナガサキアゲハ

冬季でも見かけるようになったツマグロヒョウモン(前橋市内で)

 ツマグロヒョウモンが北上しているのは地球温暖化の影響でしょうか。同様に北上が指摘されているナガサキアゲハでは、はっきりと相関関係が分かっています。

 山梨県環境科学研究所の動物生態学者・北原正彦さん(53)らの研究では、北上と気温上昇の経過がほぼ合致していました。年平均気温が15.46度、最も寒い月の平均気温が4.51度以上となった地域で、ナガサキアゲハが生息し始めることが分かったのです。生物の分布拡大は地球温暖化などの外的要因と、その生物自体が耐寒性を高めた場合などの内的要因によるものがありますが、ナガサキアゲハについては他の研究で、内的要因でないことが明らかになっているそうです。小学1年からのチョウ屋(虫屋で特にチョウ好きの呼称)という北原さんは、北上している他のチョウについても、温暖化が主因だろうとにらんでいます。
 

生息域拡大の最前線は北関東

チョウの北上を調べている群蝶会代表の池沢隆一さん(左)。標本はツマグロヒョウモン(左列)とナガサキアゲハ

 虫屋は自然環境の変化に敏感です。例えば、チョウ屋は国内に生息する約250種のチョウについて、野外で目撃した時、その種がすぐに分かります。大きさ、羽の模様、飛び方のほか、目撃した時期や周辺の自然環境などを基にして、仮に断定できなくとも、候補を数種までは絞ることができるものです。逆に言えば、候補を絞ることさえできない場合、チョウ屋はあわてます。そして、そのチョウの正体を突き止めてやろうと躍起になることでしょう。そして、正体を突き止めた後、なぜ、そこにいるのかを追究しようとするに違いありません。

 ツマグロヒョウモンの調査を進めている「群馬の蝶を語る会(群蝶会)」代表の池沢隆一さん(63)も、そんな一人。「冬季の気温が上がったことに加え、ツマグロの幼虫のエサとなるスミレの園芸種のパンジーが、クリスマスや正月用の花として流通するようになった。さらに、ツマグロの幼虫はスミレであればほとんどの種を食べ、枯れたスミレを食べた例もある。他の日本産大型ヒョウモン類と違って(年に何度も世代交代する)多化性であることも大きい。こうした複合的な要因が北上に作用している」と推測します。その上で、「かんきつ類が食草のナガサキアゲハは神奈川あたりで定着がとどまっており、北関東まで急激に進出し、定着したツマグロは繁殖力旺盛で、ずぶとい感じがする」との印象を口にします。

 群蝶会は122人の会員がおり、メールや毎月1回の例会で情報交換し、調査結果を機関誌などで発表しています。現在、南東北と接した群馬県北部で越冬した記録が見つかるか、注目が集まっています。北関東全域で一年中活動できるほどであれば、近い将来、南東北、そして本州全域で当たり前に見られる可能性が高くなります。

 さて、今年、ツマグロヒョウモンはどこまで北上するか。筆者は虫屋として、その動向に興味がわくと同時に、温暖化の行く末に不安な気持ちも抑えられないでいます。

(読売新聞地方部・宮沢輝夫)

2009年04月27日  読売新聞)
この記事へのコメント
  • めぐぱぱ
    2009年05月27日 16:53

    昨年、茨城県北茨城市でツマグロヒョウモンの飛翔と産卵〜羽化を確認しました。
    越冬は確認できなかったのですが,温暖化はかなり進んできていると実感させられました。
    今年もつい先日、飛翔しているのを見かけました。

  • 宮沢輝夫
    2009年06月04日 20:48

    めぐぱぱ様
    ツマグロヒョウモンの貴重な情報をどうもありがとうございます。おっしゃる通り、ツマグロヒョウモンの北上を見ていると、温暖化を実感せずにはいられませんね。
    記事中にも書きましたが、日本中で子どもたちが最初に見るチョウがツマグロになった場合を想像すると、なんだか少し、怖いような気持ちになりませんか?


  • ありばば
    2010年01月29日 20:04

    40年も前の話ですが、高尾山から連なる影信山の山頂付近で吹き上げられてきたツマグロヒョウモンを見たことがあります。もちろん温暖化の原因もあることは疑いませんが、ホームセンターなどのパンジーの販売など一昔前では考えられない大量の販売。冬は幼虫で越冬するツマグロヒョウモン、意外と越冬する場所が多くなったことも原因だと思います。友人の多くも幼少の時に時たま見たとも言っております。

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