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ジーンズフィフティ×読売新聞特集一覧

特集

「一番やりたいこと」ができるようになった。 ―細野晴臣

細野氏写真
1947年、東京都生まれ。日本語ロックの先駆けのバンド「はっぴいえんど」やテクノ・ミュージックを流行させた「YMO」などを経て、時代を見つめた音楽活動を続けている。坂本龍一、高橋幸宏と「HASYMO」名義でYMOをゆるやかに活動中。

しばらく休んでいた自分のレーベル「デイジーワールド」を再始動させようと思っているんだ。ここ4、5年レーベルを休んでいる間に、フォークシンガーの高田渡さんの息子である高田漣君や、リトル・クリーチャーズの青柳拓次君など、若手の人たちが力をつけてきて、一緒にセッションしたりすると、いい感じに育っているなぁと感じた。「こんなに上手いんだぞ」って技術で聴かせるのではなく、歌心を持って演奏していることに好感が持てる。彼らは彼らなりに活動しているので、決して専属で抱えたりということでなく、「場」を提供したいんだ。そういうことも僕らの世代の大切な役割なんだよね。

「デイジーワールド」再始動に際してあらかじめ決めていることは、小さな商いでやっていきたいということ。レーベルとしてやっていく以上、売り上げとは付き合わなくちゃならないけど、できるだけ関係ないところで活動できないかと思っている。今は、ネットなどでお金を払わずに音楽を聴ける環境が広がっているけど、むしろ僕が気になっているのは、聴きたいと思える音楽を作り続けられるかどうかということ。そのためには、商いよりもいい音楽を作ることが優先されなければならないはずなんだ。

2000年以降、世の中のムードはすごくしらけたと思う。1990年代は、いわゆる「世紀末」で喧噪的だったから、僕はむしろアンビエントに走っていたんだけど、それが、いざ2000年を迎えてみたら、緊張が一気にほどけてしまった。「世紀末ってなんだったんだろう」という雰囲気のなかで、アンビエントに少しずつ色が加えられた音楽が出てきた。ちょっと聴いただけだと昔のフォークに近いものもあって、驚いたね。音響的な、あるいはエレクトロなフォークっていうのかな。ビートで圧倒していくのではなくて、とても女性的で、懐かしいものだった。誰がやっているんだろうと調べたら、さっき話した若い人たちなんだよね。

自分が年齢を重ねながらこうして活動を続けていられる理由の一つは、彼らのような若い世代と一緒にやっているからかも知れない。

彼らの音楽を紹介するため、7月にアルバム「デイジー・ホリデー presented by 細野晴臣」を発売する予定。「ここでしか聴けない音楽」といテーマで「デイジー・ホリデー」というラジオ番組を10年以上続けていて、この番組の形式を使って、ショウケースとして紹介したい。同時に、僕の未発表音源を中心にしたアルバム「細野晴臣アーカイヴス vol.1」も発売する予定。あるアーティストの個展で流すために提供した曲とか、自分では大切にしていたものの発表の機会がなかったものを出していきたい。昔の僕の曲を知っている人には喜んでもらえると思う。

このところ、カントリーに関心があってね。昨年、「ハリー細野&ワールドシャイネス」名義で出したアルバム「フライング・ソーサー1947」もカントリーを基本にしたものだった。やっとできるようになったというか、実はカントリーが大好きで、ずっと取り組みたいと思っていたんだよね。自分も含め、周りの人を見ていると、一番やりたいことってなかなかできないものだとつくづく思う。本当にやりたいことって、実は後ろめたいんだよね。ざる蕎麦におつゆをいっぱいつけて食べたい、とかね(笑)。

そういうことができるようになったきっかけは特にないけど、あえて言うなら、無理な締め切りを決めたということかな。「なんでもいいからやらなくちゃいけない」という心境になったとき、やっぱり強いのは自分の好きなもの。この歳になったからこそ、忘れかけていた10代に好きだったものを引っ張り出してみたら意外と面白いんじゃないかと思う。ちゃんと締め切りを決めてね。いつでもできると考えていたら、絶対やらないから。

DVD

DVD「細野晴臣と地球の仲間たち空飛ぶ 〜円盤飛来60周年・夏の音楽祭〜」

2007年夏、日比谷野外音楽堂でおこなわれた細野晴臣の生誕60年を祝うトリビュート・イベントがDVD化。坂本龍一、高橋幸宏をはじめ、小山田圭吾、高野寛など豪華な出演陣。細野も「細野晴臣&ワールドシャイネス」名義で演奏している。commmonsから発売中。

2008年04月12日(土)更新

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